〜 表題より先に「修正の内容」を開く 〜
所要3分 / 表1枚でわかる レベル: 入門 業績予想の修正を初めて読む人向け
30秒でわかる要約
- 結論: 「上方修正」という表題だけで判断せず、「前回発表予想(A)」「今回修正予想(B)」「増減額(B-A)」を同じ指標で比べる。
- ポイント1: B-Aがプラスなら、その指標の予想は上向き。売上高、営業利益、経常利益、純利益を一つずつ見る。
- ポイント2: 「増減率」は前期実績との比較ではなく、原則としてAを基準にした変化である。※1 ※2
- 次の一手: 次の開示では、表題を読んだ直後に利益指標を一つ選び、AとBを横に並べてから理由欄を読む。
業績予想=会社が公表する将来の売上高・利益の見通し / A=前回予想 / B=今回修正予想 / B-A=前回からの増減額
業績予想の修正に関する開示を見つけたとき、表題の「上方修正」だけを読んで安心してよいのか迷うことがある。東証のガイドブックは、直近に公表された予想値と新たに算出した予想値などに差異が生じ、基準に該当する場合の開示を定めている。※1
実際の資料では、前回と今回の予想が一つの表に並ぶ。この記事では、表題、修正内容、修正理由の順番を固定し、どこで方向を判定するかを整理する。
〜 表題は入口、判断は「修正の内容」 〜
適時開示の表題は、資料を探すための入口である。上方修正か下方修正かという方向は、本文の「業績予想の修正」欄にある比較表で確認する。
開いた直後の順番は次の三つでよい。
| 読む順番 | 開く場所 | 確認する文字 |
|---|---|---|
| 1 | 表題 | 業績予想の修正、予想値と決算値との差異など |
| 2 | 修正の内容 | 前回発表予想(A)、今回修正予想(B)、増減額(B-A)、増減率 |
| 3 | 修正の理由 | 需要、費用、為替、一時損益など、予想を動かした要因 |
東証は、予想値が存在する場合は公表された直近の予想値と新しい予想値を比較し、予想値がない場合は前期の実績値を比較対象にすると説明している。※1
つまり、最初に確認するのは「前期より良いか」ではなく、「直近の会社予想から上がったか」である。
〜 AとBは同じ指標で横に比べる 〜
ダスキンの2026年8月10日付開示には、2027年3月期通期の前回発表予想(A)と今回修正予想(B)が並んでいる。※2
| 指標 | 前回発表予想(A) | 今回修正予想(B) | 増減額(B-A) | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 201,500百万円 | 202,900百万円 | 1,400百万円 | 0.7% |
| 営業利益 | 9,000百万円 | 10,100百万円 | 1,100百万円 | 12.2% |
| 経常利益 | 12,900百万円 | 14,000百万円 | 1,100百万円 | 8.5% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 9,800百万円 | 10,600百万円 | 800百万円 | 8.2% |
この表では、四つの指標でBがAを上回り、B-Aもすべてプラスである。したがって、ダスキンの通期予想は売上高だけでなく、営業利益、経常利益、純利益も前回予想から上向いたと読める。※2
一方で、売上高の増減率0.7%だけを見て、利益も同じ強さで伸びたと決めることはできない。利益の方向と変化幅は、営業利益、経常利益、純利益の行をそれぞれ見る必要がある。
〜 増減率の分母を取り違えない 〜
「増減率」は、表のAとBの差を、原則としてAを基準に示す欄である。前期実績との比較を示す欄ではない。ダスキンの表でも、前期実績は「ご参考」として別の行に置かれている。※2
東証の開示判断も、予想値がある場合は直近予想との比較を基本にしている。連結売上高では直近予想に対する比率が1.1以上または0.9以下、連結営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益では1.3以上または0.7以下が判断基準として示されている。※1
この基準は、個人投資家が毎回開示の要否を判定するためのものではない。比較表の「増減率」が何を分母にしているかを確かめ、前期比や市場予想と混同しないための補助線として使う。
予想PERの分母を確かめる記事でも、画面の数字を見たあとに会社資料のどの数字へ戻るかを扱った。業績予想の修正でも、画面のラベルより先に会社資料の比較欄へ戻ると読み違いが減る。
〜 理由欄では「何が動いたか」だけを拾う 〜
AとBの方向を確認したら、「修正の理由」を読む。ダスキンは、ミスタードーナツ事業が好調に推移したことと、全社費用が減少する見込みを修正理由に挙げている。※2
同じ資料でも、すべての不確実性が予想に入っているとは限らない。ダスキンは、中東情勢の下半期以降の影響を合理的に見積もることが困難として織り込まず、熊本地震の影響も算定中として修正に反映していない。※2
ここで見るべきなのは、理由の文章の長さではない。Bに織り込まれた要因と、まだ織り込まれていない要因を分けて、次の決算で確認する変数を一つ残すことである。
〜 業績予想と配当予想は別の表で読む 〜
ダスキンの開示には、業績予想と配当予想の両方が載っている。通期の年間配当予想は125円から135円に修正された。※2
ただし、業績予想のB-Aと配当予想の増減は別の表にある。利益予想が上向いたことと、配当が増えたことを確認したうえで、配当の決定理由は配当方針と照らして別に読む。
「業績予想の修正等」は、通期の売上高・利益だけでなく、開示後の財務・経営指標や四半期累計期間の予想値にも重要な差異があれば対象になり得る。※1 ※3
〜 Rirori’s Eye 〜
次に業績予想の修正開示を開いたら、表題を読んだ直後に利益指標を一つ選ぶ。その指標のA、B、B-Aを横にメモし、最後に理由欄へ戻って、次の確認対象を一つだけ残す。
関連して読む
※1 東京証券取引所「会社情報適時開示ガイドブック(2026年7月版)」第2編第4章「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」(2026年7月)。公式PDF
※2 株式会社ダスキン「業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」(2026年8月10日)。公式PDF
※3 東京証券取引所「業績予想の修正、予想値と決算値との差異等」(管理番号6851)。上場会社向けナビゲーションシステム
