業績予想の修正はどこを見る?AとBを同じ指標で横に読む
業績予想の修正は、表題より先に「修正の内容」の表を開き、前回予想(A)と今回予想(B)を同じ指標で横に読む。取引所の基準と実例を照らして確かめました。

要点
- 表題より先に「修正の内容」の表を開き、AとBを同じ指標で横に並べます
- 増減率は、この表では(B−A)÷Aで、前期実績との比較ではありません
- 中間期と通期、連結と個別は別の表なので、分けて読みます
- 取引所の基準は「新しい予想÷直前の予想」の比率で、配当予想の修正には軽微基準がありません
- 理由欄では、予想に織り込んだ要因と、織り込んでいない要因を分けます
読む順番
この記事は、2026年10月27日に東京証券取引所のガイドブックとFAQ、ダスキンの公表文書とIRページを読み直して確かめた内容をもとに書いています。ダスキンは読み方を示す実例として使うだけで、同社の評価はしません。
表題より先に「修正の内容」を開く
ダスキンは2026年8月10日に「業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」を出しました。本文の冒頭には、2026年5月15日付で開示した2027年3月期の第2四半期(中間期)と通期の業績予想、そして配当予想を修正する、と書かれています(出典2)。表題からは、上向きか下向きかは分かりません。方向は、本文の「業績予想の修正」にある「修正の内容」の表で確かめます。
通期の連結の表を読む
表では、前回発表予想(A)、今回修正予想(B)、増減額(B−A)、増減率が同じ指標で並んでいます。通期の連結は次のとおりです(単位は百万円。当期純利益は親会社株主に帰属するものです)(出典2)。
指標 | 前回予想(A) | 今回予想(B) | 増減額 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
売上高 | 201,500 | 202,900 | 1,400 | 0.7% |
営業利益 | 9,000 | 10,100 | 1,100 | 12.2% |
経常利益 | 12,900 | 14,000 | 1,100 | 8.5% |
当期純利益 | 9,800 | 10,600 | 800 | 8.2% |
四つの指標すべてで、BがAを上回っています。増減率は、たとえば営業利益なら1,100÷9,000で約12.2%になり、この表ではAを分母にした値だと確かめられます(私の計算です)。同じ文書には前期実績も「ご参考」として別の行にあり、通期営業利益は8,748百万円です。Bをこの前期実績と比べると約15.5%の増加で、増減率の12.2%とは分母が違うので別の数字です(私の計算です)。
中間期と通期、連結と個別は別の表
同じ文書に、連結の中間期、連結の通期、個別の中間期、個別の通期の四つの表があります。通期だけを見ていると、中間期の変化を見落とします。連結の中間期は次のとおりです(出典2)。
指標 | 前回予想(A) | 今回予想(B) | 増減額 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
売上高 | 98,000 | 99,400 | 1,400 | 1.4% |
営業利益 | 4,100 | 5,100 | 1,000 | 24.4% |
経常利益 | 5,900 | 6,900 | 1,000 | 16.9% |
中間純利益 | 3,700 | 4,400 | 700 | 18.9% |
個別の表では、中間期の営業利益の増減率が37.5%と連結より大きく見えます(出典2)。ただ、連結財務諸表を作る会社の単体の営業利益は、上場規程上の「業績予想の修正等」の開示対象ではない、とガイドブックに書かれています(出典1)。大きな率の数字が出ていても、どの表の数字かを分けて読みます。
取引所の基準は「比率」で、配当には軽微基準がない
ガイドブックによると、直近の予想値に比べて新たな予想値に差が生じ、新しい予想値を直近の予想値で割った値が一定の水準に該当するときは、直ちに開示することが義務付けられています。連結では、売上高が1.1以上または0.9以下、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益が1.3以上または0.7以下です(出典1)。この比率は、増減率でいえばプラス30%以上またはマイナス30%以下にあたります(私の計算です)。
ダスキンの連結の予想を、この比率にあてはめて計算すると次のとおりです(私の計算です)。
指標 | 基準の比率 | 通期のB÷A | 中間期のB÷A |
|---|---|---|---|
売上高 | 1.1以上、または0.9以下 | 1.007 | 1.014 |
営業利益 | 1.3以上、または0.7以下 | 1.122 | 1.244 |
経常利益 | 1.3以上、または0.7以下 | 1.085 | 1.170 |
当期純利益 | 1.3以上、または0.7以下 | 1.082 | 1.189 |
どの指標も、基準の比率には届いていません。なお、中間期のような四半期累計期間の予想には、上場規程上の比率の定めはなく、通期の基準を使うことなどが考えられる、とFAQに書かれています(出典3)。表の中間期の列は、その場合の参考です。
それでも、この修正は開示されています。FAQには、基準に当たるほどの差が生じていない場合でも、四半期決算短信の開示などに合わせて、新たに算出した予想値を積極的に開示することは望ましい、と書かれています(出典3)。ダスキンのIRページを見ると、この修正と第1四半期決算短信は同じ8月10日に出ています(出典4)。ただ、ダスキンがその考えで開示したのかどうかは、文書に書かれていないので分かりません。ガイドブックには、第1・第3四半期の決算短信と同じ日に業績予想の修正等を行う場合の書き方も決まっていて、短信に修正後の予想値を理由とともに書き、短信で適切に開示していれば別の開示を省略できる、とされています(出典1)。実際の第1四半期決算短信にも、修正の有無が「有」と書かれ、修正のお知らせを見るよう案内されています。
配当予想は、別の扱いです。ガイドブックには、配当予想の修正に軽微基準はなく、期中に当期の予想値を修正した場合は開示が必要、と書かれています(出典1)。
理由欄は「織り込んだもの」と「織り込んでいないもの」を分ける
ダスキンは、修正の理由として、ミスタードーナツ事業が引き続き好調なことと、全社費用が減る見込みになったことを挙げています。訪販グループとその他は、期初予想から変更がないとも書かれています(出典2)。
もう一つ大切なのは、予想に織り込んでいない要因です。期初の予想では織り込んでいなかった中東情勢の影響は、中間期までは想定される影響額を織り込み、下半期以降は合理的に見積もるのが難しいため織り込んでいません。2026年7月28日に起きた熊本地震の影響は、影響額を算定中で、中間期と通期の修正に織り込んでいません(出典2)。
FAQには、修正理由は経済動向のような抽象的な要因にとどまらず、具体的に説明することが望ましい、と書かれています(出典3)。理由欄は、何が動いたかに加えて、何がまだ入っていないかを拾う場所だと、私は考えています。2026年10月27日に確かめたところ、ダスキンのIRの適時開示一覧には、8月10日以降の業績予想に関するお知らせは見つかりませんでした(出典4)。
配当予想は別の表と、別の理由で読む
同じ文書に配当予想の表もあります。年間の配当予想は、前回の125円から135円に修正されました(出典2)。
第2四半期末 | 期末 | 年間合計 | |
|---|---|---|---|
前回予想 | 55円 | 70円 | 125円 |
今回予想 | 60円 | 75円 | 135円 |
前期実績 | 50円 | 68円 | 118円 |
配当の修正理由は、業績予想とは別に書かれています。「中期経営方針2028」で毎期の配当額を、連結配当性向60%または自己資本配当率(DOE)3.0%のいずれか高い額とする、としていて、通期の当期純利益予想が修正されたため、配当予想も修正する、という説明です(出典2)。業績予想の増減と、配当の増減を一つの結論にまとめず、それぞれの理由を読みます。
いまの自分のルール
表題ではなく修正の内容の表を開き、AとBを同じ指標で横に並べてから、理由欄に進む。
まだ分からないこと
- ダスキンが、基準の比率に届かない修正を開示した理由(文書には書かれていない)
- 熊本地震の影響額が算定されたあと、どの文書で示されるのか
- 中間期のような四半期累計期間の予想で、実際にどの程度の差があれば修正が開示されるのか
Rirori's Eye
次に確かめたいのは、2026年11月6日に公表予定の第2四半期決算短信です。中間期の連結の営業利益の実績が、今回修正した予想の5,100百万円とどう違うかを、同じ指標で横に並べて読みます。


